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対談「教育に国家観を取り戻せ!」
ジャーナリスト 山谷えり子 × ジャーナリスト 櫻井よしこ
 
はびこる自虐史観、学力低下、学級崩壊、過激性教育…。
「国家」を徹底して忌避してきた「戦後教育」によって荒廃した現場再生の道はあるか。

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(5/5) 教育正常化は情報公開から
--- 櫻井
 自虐的な歴史教育や家庭を壊す家庭科、さらに不登校の問題も学力低下も、実はすべて通底しています。
--- 山谷
 昭和二十二年に教育基本法が制定された際、文部官僚がこんな説明をしています。戦前の教育には自由の束縛、一方的な価値観の押しつけがあり、知育、徳育の押しつけがあった。戦後の教育はその押しつけから解放されようと。
 つまり、戦前への反省から、個人の自由や多様性をとにかく尊重する方向へと教育が流れ、その行きついた末がいまの学校現場だと思います。国家が個人の自由や多様性を束縛したという戦前への反省と、国家、家族の解体を目指すイデオロギーとがあいまって、反国家的で日本の歴史や文化を忌み嫌う傾向がはびこってきたといえましょう。
 その「個」の尊重が子供にまで適応され、子供を大人と同じように完成された人格として扱って、あるがままを認めればよしとなってしまった。しかし、子供は成長するもので、鍛錬すればするほど豊かになっていくわけですよ。
 そうした反省から、教育基本法の改正が国会の日程に上るか上らないかというところまでやっときました。文部科学大臣の諮問機関として基本法改正の方向性を打ち出した中央教育審議会(中教審)の答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」をみると、「国を愛する心」や「伝統・文化の尊重」が掲げられて、一見、弊害の大きかった戦後教育を大きく転換させる改正になるのかなと期待してしまいます。
 ところが、内容を詳しくみると、首をかしげたくなるんですね。従来の個人偏重主義の延長ではないかという疑念すらわいてきます。例えば、「国家や社会の在り方は、その構成員である国民の意思によってより良いものに変わり得るものである(中略)これからは、国や社会の問題を自分自身の問題として考え、そのために積極的に行動するという『公共心』を重視する必要がある」とあり、それを「自立した『人間』」「新しい『公共』」といった言葉で説明しています。そこからは、個人の背後には歴史や伝統、文化があり、我々は国家や社会の在りようを過去から継承し、次世代に伝えていく存在であるという考え方は読み取れません。むしろ、歴史から切り離された現代の「個人」たちが好き勝手に社会を作りかえることができるというように読めます。
 今後の改正作業は慎重に見守らないといけないと思います。
--- 櫻井
 ジェンダーフリー、あるいは子供の「主体性」「個性」尊重といった思想的な実験を、現実の子供相手に行政や現場が行っている。それをチェックできないのは政治の問題だと思います。孤軍奮闘していた山谷さんも国会からいなくなっちゃって、困ったことです。
--- 山谷
 学校の教室という密室で児童虐待のようなことが行われていると私はよく言ってるんですけども。親の教育権を大切に考えてほしい。
--- 櫻井
 一昨年、去年といろいろな学校を回り、教師、PTA、校長先生、教育委員の方々、子供たちと話しましたけど、両極端なんですね。一生懸命で問題意識を持った先生、校長先生が教育委員会やPTAときちんと連携をしているところは、うれしくなるくらいよくやっています。ところが、あれほどゆとり教育と学力低下が批判されて、歴史教育の問題で騒ぎになっても、何にも感じていない先生もたくさんいらっしゃる。これは驚きでしたね。一生懸命やっている先生がいるから、その学校は全体が頑張っていると思ったら、必ずしもそうではないのです。一生懸命やっている先生がかえって足を引っ張られているケースも珍しくありません。不登校への対応も同じでしょうけれども、全体を変えていくのはこんな難しいものかということを実感しました。
--- 山谷
 学校現場は閉鎖性が強く、教員組合の抵抗で評価も、調査も難しいという状況が続いてきました。学力調査すらも四十年間できなかった。実証的なデータに基づく政策はたてられず、お題目だけでやってきたんですね。現実には子供たちの学習時間は減り続けていたにもかかわらず、かつての「詰め込み教育」が続いているかのようなイメージに乗ってゆとり教育を推進した。子供たちの荒れも管理教育のせいだというような無責任な批判を受け入れて校則を緩和させ、気付いてみれば、子供たちが静かに授業を受けられるという最低限の学校運営さえ危うくなっています。
--- 櫻井
 この国では、政治家も官僚も、教育で誤った政策を展開しても責任を取りません。「強制連行」や「従軍慰安婦」で、間違った事柄を定着させて日本を貶めた人たちの誰も責任を取っていない。「ゆとり教育」で子供たちの学力低下を招いたことでも同じです。教育とは国づくりの土台であり、教育政策を誤るということは国を誤らせるということです。その責任をだれも取らないのだったら、これからも国を誤らせる無責任な政策が出てくるのを止めることはできません。
--- 山谷
 国民が声を上げ続けていくしかありませんね。学校の実情を調査して、どの先生がいいのか、どういう授業が面白くて子供たちの力を伸ばしているのか。また子供たちをきちんと育てているのかどうかということを表に出すべきだと思うんですね。歴史と家庭科、国語、音楽の教科書も全国の図書館に置いて国民が見られるようにすべきだと思います。
 絶望的な状況ではありますが、国民の皆さんも気付き始めている。教育を正常化する大きな流れを作るタイミングが来ているという希望を持っています。
--- 櫻井
 日本の将来を託せる若者を育てるためにも、これからも頑張って下さいね。
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