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対談「教育に国家観を取り戻せ!」
ジャーナリスト 山谷えり子 × ジャーナリスト 櫻井よしこ
 
はびこる自虐史観、学力低下、学級崩壊、過激性教育…。
「国家」を徹底して忌避してきた「戦後教育」によって荒廃した現場再生の道はあるか。

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(1/5) 相変わらずの自虐史観教育
--- 山谷
 今年一月の大学入試センター試験で出題された「強制連行」が不適切な設問であると多くの人が指摘していますね。「世界史B」で、「日本統治下の朝鮮」に関連して、四つの記述の中から、「第二次世界大戦中、日本への強制連行が行われた」という選択肢を正解として選ばせる問題でした。
 私の子供が受験生だったこともあり、センター試験の内容を詳しく見て驚きました。不適切と言わざるをえない出題は、「強制連行」だけではありません。「現代社会」では、男女平等の社会づくりとして「夫婦別姓」を取り上げています。
「強制連行」のように事実ではないことを事実として選ばせる、あるいは国民的コンセンサスも得られていない「夫婦別姓」を導入することがあたかも正しいことのように子供たちに刷り込まれようとしているわけです。
 昨年九月、川口順子外相が国連総会で北朝鮮による日本人拉致事件について演説した際、北朝鮮は、「日本は朝鮮半島占領時代に八百四十万人を強制連行し…」と反論しました。八百四十万人に比べれば、十数人の拉致など問題にはならないという趣旨ですが、日本は外務省も国会も、それに対して何の反論もしませんでした。
 そこで思い出したのは、私が拉致議連の副会長をやっていた昨年三月、拉致被害者の一人、横田めぐみさんのご両親の滋さんや早紀江さんたちと一緒にアメリカに行き、アーミテージ国務副長官や有力議員らに拉致事件解決への協力を訴えてきたときのことです。横田夫妻らの話を聴くと、「それは国家の問題だ」「主権の侵害だ」と彼らの関心はぐんと一気に高まったんですね。それを肌で感じられた早紀江さんは私に、「国なおしよね」とつぶやかれました。自国民が国内から拉致されながら、四半世紀も放置してきた日本という国の不甲斐なさを痛感されていたと思います。
 早紀江さんのつぶやきの重さを思ったとき、国連総会での北朝鮮の主張はどうしても看過できませんでした。日本が反論しないと、「八百四十万人の強制連行」が事実として国際社会に定着し、拉致事件で日本は当たり前の主張すらできなくなってしまいますね。そこで国連総会から一週間後の九月三十日に国会で北朝鮮の主張が事実かどうか確認したところ、川口外相は「昭和三十四年に外務省が調査した際の資料の通りだ」と答えました。外務省調査によれば、大半の人たちは自由意思で日本にきていた。昭和十九年九月から翌年三月まで国民徴用令が朝鮮半島に適用されたことはありましたが、大半の渡航者は自主契約で占められていたというのです。
 うちの子は日本史で受けたんですけども、世界史Bを受験した友人に川口外相の国会答弁のことを話したら、「日本は悪いことをしたのに、事実を隠そうとするの。強制連行は正解よ。教科書に書いてある」とフフンと笑っていたそうです。
 事実は事実として受け止めることは大切ですが、事実ではないことまで刷り込みされて、自分の祖国を冷笑するような子供、若者を育てている。偏狭なナショナリストを育てようというのではありません。国際社会の場で、他国の意見に耳を傾け、自国のことを率直に発言する日本の子供たちを育てるためにも、歴史教育は事実に基づく中立性を大切にして欲しいと考えます。
--- 櫻井
 「日本史B」では、「既存の体制が生み出す矛盾に対して、マルクス主義の思想や学問は、根元的な批判を投げかけた。1920年代後半から1930年代初頭にかけてプロレタリア文学は隆盛期を迎え、また、マルクス主義による社会分析の成果が数多く生み出された」という設問がありました。マルクス・レーニン主義は現実の国際政治を見れば完全に失敗したことがここ十数年で明らかになっていますが、まだマルクス・レーニンに想いを残しているんだなあと感じた問いでしたね。
 文部科学省は、日本の歴史や文化を見直し、きちんと評価していこうと方針転換をしましたね。「ゆとり教育」についても、学習指導要領の枠を超える知識を教えてもよいと一応は方針転換した。だけれども現場の教師たちはなかなか変わり得ない、変わっていないということが、このセンター試験の出題に表れているのだと思います。
 「強制連行」の出題に関する「新しい歴史教科書をつくる会」の公開質問状に対して、大学入試センター側は「教科書に載っていればよく、史実に基づいているかどうかは検討していない」と回答しています。歴史の事実であるかどうかも検討せずに出題するのは許せないことです。日本を貶め、さらに拉致事件では北朝鮮を利するような問題が、教科書に掲載されているということだけを根拠に出題されたのは、この国の未来を考えたときに、深刻な負の影響を及ぼすと思います。出題者と、出題を許した担当者は全員何らかの形で責任を取るべきでしょう。同じような過ちを繰り返さないためには、問題意識のある人たちが発言し続けなければならないと思います。
--- 山谷
 アメリカのA・リンカーン元大統領は「国民は記憶の琴線で繋がっている」という言葉を残していますね。史実ではない言葉を混ぜ込んで過去の記憶を貶め、断絶させたら、次の時代に「日本国民」という存在は消えてしまうだろうと思います。
 教育の分野で歴史認識が問題になったのは、昭和五十七年に教科書検定の基準として近隣諸国条項が盛り込まれた時が最初ですよね。検定で、中国・華北地方への「侵略」を「進出」に書き換えさせられた教科書があったとマスコミが誤った報道をし、中国、そして韓国からたいへんな抗議がきた。旧文部省も大臣も、「そうした事実はない」と国会で繰り返し説明したにもかかわらず、当時の宮沢喜一官房長官が「政府として責任を取る」として近隣諸国条項を盛り込む形で収拾をはかった。それ以降、「強制連行」や「従軍慰安婦」「南京大虐殺」の記述に検定意見をつけることができなくなったんですね。今春から使用される高校教科書では、全二十一点中十七点が「従軍慰安婦」について書き、うち五点はすでに虚構であることが証明された「強制連行」説にも触れています。
 また、「南京大虐殺」では、当時の南京の人口よりも多い三十万人が虐殺されたという中国側の主張をいまだに掲載している教科書すらあります。
 これだけ問題が出てきたからには近隣諸国条項を見直して、正しい歴史の事実を学んでよき国民をつくるため、マスコミも政治家も大きく声を上げるベきだと思います。
--- 櫻井
 同感ですね。それでもせめて、中国や韓国が日本と同じように近隣諸国条項を取り入れ、近隣諸国に配慮した教科書を作っているのならば、話は分かります。しかし現実は、日本のみ一方的に近隣諸国条項をつくって近隣諸国に配慮しています。
 例えば韓国は、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書に対して、神話は史実ではないし、その国を非常に高らしめて教えるものだから載せてはならないといって反対しましたけれども、韓国自身の歴史教科書は冒頭でかなりのページを使って神話を紹介しています。しかも神話としてではなく、史実として書かれているんですね。
 同様に、日本に近隣諸国に配慮せよと声高に要求してくる中国の歴史教科書が日本をどれほど貶めているか。事実なら受け入れざるを得ないけれども、日本を悪逆非道に描くために事実でないこともたくさん書かれていて、繰り返し繰り返し小学生の段階から教えています。
 歴史についてはその国の教え方があるのであって、私たちは中国、韓国の歴史の教え方に対しては大いに抗議をしたいと思うけれども、明らかな誤りを指摘する以上は立ち入りません。同じルールを中国や韓国にも守ってもらうという意味で、主権国家として教育の自主権を確立しないといけないと思います。
 日本のように自国の歴史を貶めるいびつな教育をしている国はどこにもありませんね。この現実を国民に知ってもらって、公正な歴史観の普及を求める世論を形成していかなければいけないと思います。このままでは、中国から「歴史カード」を政治的に使われる状況は一向に改まりません。
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