参議院少子高齢社会に関する調査会として、ノルウェー、フランス、ドイツに少子化対策の調査に行ってきました。ノルウェーは出生率1.8、月に約1.5万円の児童手当が16才まで、1年間は育児休暇が給与の100%が補われて取れます。 |
育児休業は3年まであり、0才児保育は基本的にやりません。父親が育児休業をとるパパクォーター制も5週間まで。また保育所か現金かを選べるキャッシュベネフィット制や週に2〜3回1日4時間ほどのオープン保育所もあるなど、多様な育児環境の整備と、子供の成長に配慮しています。 |
フランスは、出生率1.9でアイルランドに次いで欧州No.2の出生率ですが、人口維持には不十分と、今も対策を積極的に考えつづけています。1945年に国として家族の重要性を強調して以来、フランス家族問題全国連合会などの場で議論、調整を続けています。最近は1年間育児休業の充実、3人いれば月に10万円の手当が出るなど金額も十分になるようにしました。 |
子供がいる家は税金も年金もプラス(3人の子を育てれば満額給付)になるよう設計され、家族手当は20才まで出されます。家族問題省庁間連絡会議(保健省)を訪ねると“なるべく若年で出産することが望ましいと医師会などに現実のデータを発表してもらったり、企業への協力の呼びかけをし、家族と過ごせる時間を作るよう行動しています”とのことでした。 |
日本でも、ツギハギだらけの少子化対策や育児の外注化一本やりではなく、政府の中に、経済財政諮問会議のようなものと同様の家族問題諮問会議を作って、家族問題として“ゆりかごから墓場まで”の育児手当、働き方の見直し、奨学金のあり方、税と社会保障のあり方を包括的に議論して、国民の納得を得られる計画をリードしていかねばならないと思います。 |
最も手っとり早いと思われた保育所を整備し、それでも出生率が上がらずに、あわてて育児手当を少々あげるというのでは、この先もまるでガダルカナルのようなもので、作戦とは言えません。 |
家族、そして生きることの意味、子どもの幸福を社会全体で願うことが出来る大きな枠組みを示していくことが重要であると思います。ドイツは1子あたり18才まで月2.5万円の児童手当と3年までの育児休業制度を作っています。2人以上子育てをしていれば10才まで就労せずとも年金保険料を納めたものとみなされる制度もあります。中絶する場合は、本当に中絶しなければならないかを専門家に相談しなければならない制度となっています。 |
この制度により、25才以上の女性は産むことを決意する場合が多いそうです。また出産を助ける財団も設立されています。ミュンヘンの市立病院を訪ね、赤ちゃんポストの説明もうけました。出産したものの育てられない女性が、良い里親を探してほしいと預けていくもので、ドイツ国内に現在78カ所あります。生命尊重の視点から、市議会より委託があって行っているということです。 |
現在、ドイツでは新政権が誕生し、今後政策も変化していくでしょうが、育児のあり方、家族政策のあり方は、幅をもって提供し、各家族がそれぞれの家族観により選択できるようにというのが根本の考え方の中にあります。 |
なお、ノルウェーでは国会家族委員会、フランスでは家族問題全国連合会家族問題省庁連絡会議があり、ドイツでは家族大臣ポスト、地域家族連合があるなど家族問題を重要テーマとして位置づけ、包括的に受精から死までの人間の生き方を家族という場から考えていく制度と場があるのに、日本には、こうした場がまだ不十分であるということが多くの問題をかかえていると感じました。 |
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平成17年12月7日 山谷えり子 |