メッセージ(バックナンバー)

 「平和を願い真の国益を考え靖国参拝を支持する若手国会議員の会」が上坂冬子さんをお招きしてお話を聞きました。
 出席議員は約80人。「戦争を知らない人のための靖国問題」(上坂冬子著・文春新書)がこの3月20日に発売されましたが、売れに売れて4刷目が出版されています。
 上坂さんは兄たちが靖国で会いましょうと出征した言葉を聞いた日の記憶から東京裁判、サンフランシスコ平和条約、A級、B級、C級戦犯の問題、特にB、C級戦犯52人の取材話しなどを語って下さいました。
 サンフランシスコ平和条約では戦犯問題に関して取り決めがあり、49カ国が署名しましたが、中、韓、台湾の名はなく、条約に署名しなかった国は戦犯問題に口出ししてはならず、「【原文 対日平和条約第二十五条】この条約の適用上、連合国とは(中略)、当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする(中略)。ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原又は利益も、この条約のいかなる規定によっても前記のとおり定義された連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない。」をあげられ、中韓は、干渉の根拠がないのではないかと語られました。
 平和条約は処刑された約1000人という人々の命と引きかえで結ばれ、日本の独立がなったことを訴えられ、この論点にもとづけば、内政干渉以外の何ものでもない中韓からのクレームを聞いて、日本の次の首相の座までぐらつくようなことは信じられない。日本の国会議員は何と情けないことかとお叱りを受け、多くの議員は苦笑い。帰路、お見送りしましたが、靖国参拝を支持する議員が、こんなにたくさん、熱心にいることに驚かれ、十分マスコミが報道しないことに首をかしげておられました。
 戦中と占領下の苦難を知らずに靖国参拝の是非を判断してはならない。無知と偏向を排し、先人への敬意を抱いて書かれたという本の始めに、上坂さんはこう書かれています。
【靖国参拝是か非かの無意味】
 小泉首相が靖国神社の秋の例大祭の初日(二〇〇五年十月十七日)に参拝し、ポケットから小銭を取り出して賽銭箱に入れたのはよく知られている通りだ。
 実はその一週間前にNHKで世論調査をしたところ、首相の靖国参拝を続けたほうがいいという人が四十三%、止めたほうがいいという人が四十五%だったという。
 この世論調査を私はまともに受け入れる気になれない。
 いまや、戦争を知らない世代が八十%を占める時代となった。
 戦争も、戦時下の緊張も、靖国神社なるものが戦時下で果たした役割も、まったく知らない人が圧倒的多数を占めているときに、参拝を続けたほうがいいか、悪いかと問い掛けることにどれほどの意味があるというのか。
 靖国神社に一度も参拝したことがなく、所在地さえ知らないという人が増えてきた昨今、近隣諸国の人々が小泉首相の靖国参拝に抗議していると聞けば、他人の嫌がることは避けたほうがいいという単純な日本的道徳律で「止めたほうがいい」と答える人は多いに決まっている。
 靖国問題を語る前に、靖国神社がかつて日本人にとってどのような存在であったかを十分に知らねば、心情的にも論理的にも話しが噛み合うはずがない。
 靖国問題が国内外でこれほど話題になりながら、参拝は是か非かというだけで、一向に核心に迫る議論として発展しないのは、かつて靖国神社が日本人とってどんな存在であったかとう肝心なポイントをはずしたまま、上滑りの雑談ばかりが進行しているせいである。

平成18年4月7日 山谷えり子

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