メッセージ(バックナンバー)

 宇宙飛行士野口聰一さんを自民党文部科学部会にお招きしました。
 サッと扉が開いて、テレビで見るよりずっとスラリとした野口さんの姿が入ってこられた時、その雰囲気に二人の男性を思い出しました。一人は戦争が終わったばかりのイラクで、調査をする私の安全に気を配ってくださった故・奥克彦大使、そして、もう一人はそのイラクに一次隊の隊長として行かれた番匠幸一郎郡長でした。何故三人の姿がダブったのかわかりませんが、危険を承知で、使命の意味を誰よりも深く自覚し、柔和に謙遜に忍耐強く事にあたり、自分に厳しく他人に優しい懸命な生き方を感じたせいかもしれません。
 「暗黒の宇宙の中で、命の輝きに満ちて回っている青い地球。青といっても一つではなく南の青の明るさ、北の青の深さ、美しく、いとおしく、不思議な輝き…」野口さんは静かにゆっくり詩のように話されました。日本の教育についてどう考えるかを問うと、“画一的なプログラムを学ぶ環境は良いが、学校教育以外の場で学ぶメニューが少ないように思う。宇宙飛行士はいろんなことを同時にやらなければなりません。でも宇宙飛行士だけでなく、例えば、良い酪農家は、乳しぼりの技術、衛生を保つ配慮、経営計算、市場への走り込み、マーケティング、人間関係を良くする魅力といろんなものが求められる。良き仕事とはそういうものでしょう。だとすれば勉強以外の体験の豊かさも大切で、例えば、ボーイスカウトやスポーツ少年団などへの参加。また失敗の体験も大切です。失敗しても復活戦があることが大切”死の危険を感じたかについては、“危険ではあることなので、遺言を書いたり、もし亡くなった場合、家族に対しては、こうしてほしいということを仲間たちに伝えておきました。家族には、自分の仕事がそうした種類の仕事であることをふだんから説明しています。危険をおかしても、やることがあるというのは、宇宙飛行士冥利だと思います”(録音をとっていなかったので、不正確な表現があると思いますがお許しを)
 ディスカバリー号の搭乗員は7人。船長は宇宙飛行が4回目という女性アイリーン・M・コリンズさんです。7人のうち2人は女性です。
 野口さんと握手をした時、その手がスラリと感じられたので指を見ると、まるで芸術家のように美しい長い指でした。“繊細な指でいらっしゃいますのね。船外活動、タイル修理やロボットアーム操作は器用でなくちゃいけませんものね”と言うと、“いやあ…”とテレていらっしゃいました。
 そう、宇宙飛行士は、指先も器用でなければならない!!のですね。
 “宇宙は行ってみたら近かった。8分30秒で着いた。しかし、行くまでに40年かかった”と言われた野口さん。お帰りなさい。そして今後のご活躍の実り多からんことを祈ります。

平成17年10月3日 山谷えり子

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