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現実は想像を超えて
心のともしび 2001年10月1日
 
 生きていく中で、時折重荷に押しつぶされそうになる時期があるものです。
 若い頃、年子で三人の子を育てながら会社勤めをしていた頃の私は、精神的にも肉体的にもヘトヘトでした。やらなければならないことはあまりにも多く、若かったが故に夫にも周囲の人にも、意地を張っていました。良くいえば自立心があり、依存してはいけないという思いでキリキリ、ヒリヒリしていました。
 そんな日々の中で、とうとう過労で片目がよく見えなくなったある時、とある教会の前に書かれていた“疲れた者、重荷を背負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう”の言葉に出会ったのです。瞬間、心の氷が溶けるように思いました。
 今、ふり返っても、自分の中の弱さと闇の深さに押しつぶされそうであったあの頃だからこそ、その言葉が心の中に深くあたたかく降りていったのだと思います。
 取材したあるオリンピック選手の言葉も忘れられないものを私に残しました。  「自分がつぶれてしまうかもしれないという極度の恐怖と緊張感で発熱するほどでしたが、いざ本番になるとそのプレッシャーを楽しんでいる自分を発見しました。現実は想像を超えているというのは、ステキな発見でした。」
 つぶれてしまうほどの弱い自分をしっかり背負い、あるいは持て余して震えていたからこそ、存外強い自分に出会えて新鮮な驚きをかんじたのでしょう。
 自分が思っている以上に自分の存在は大きく測り知れず、どんなに難しく見えることも、自分の予想もしない展開で進んでいくことがあることは、どの人も体験したことがあると思いますが、重荷にあえぎ、弱さを嘆いた者ほど、また予想外の喜びに出会えるような気がするのです。重荷や弱さこと、尊いものかもしれません。

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山谷えり子事務所
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