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「山谷えり子のちょっとブレイク」
掲載エッセイ
 
グローバリズムについて
 21世紀はグローバリゼーションの時代だといわれる。アメリカンスタンダードが世界を支配し、またヨーロッパは一つにまとまって、アメリカにときに対抗し、ときに協調し…といわれる。そうした面はあると思うが、グローバリゼーションがすすむほどに、一つひとつの国々が国がらを大切に思う気持ちもまたすすんでいくような気もする。
 九年前に亡くなった義父はハリウッド生まれの日系二世であった。過日、アメリカに義父とはカリフォルニア大学時代に親友だったという山崎さんを訪ねたとき、その住まいの日本的なたたずまいに感動を覚えたことがある。戦争がはじまり、日本に帰るという義父を港まで見送った山崎青年は「君は立派な日本人になれ。僕は立派なヤンキーとしてアメリカに残る。アメリカと日本との二股はいけない。君は立派な日本人になりきるのだ」と握手して励ましたという。
世界地図 その後、山崎青年は日系人として強制収容所に収容され、戦後は多くの日系人の寄付によって建てられた日系人教会セントメリーズ教会の牧師となり、第二次大戦や強制収容所、ベトナム戦争で亡くなった日系人のためにミサを捧げ続けておられる。近所のメキシコ料理店でランチをごちそうになった折、義父が通っていたころのオーナーの息子がいまは調理場にたち、山崎牧師の働きぶりを話してくれた。
 「日系人は、もうここいらへんから引っ越していき、いまはヒスパニック系など英語を話せない新しい移民のために教会はフル回転です。ボランティアで語学教室や託児室を開いてにぎやかですし、牧師は地域の世話や病人の見舞いで走り回っておられますよ。ときには八十歳代のガールフレンドたちに囲まれてゴルフプレーもね」
山崎牧師の日本語は折り目正しく、恥じらいを含んだ笑顔や振る舞いは、日本文化のもつ魅力を改めて感じさせるものである。
 インターナショナリズム、国際化というのはグローバリズムと違って、それぞれの国のナショナリズムがあって、それをつないで育っていくものである。山崎牧師が日本的なインテリアの部屋で美しい日本語を話しながら、日系人のために祈りつつ、引っ越してきたヒスパニック系新移民のために日々働き、若き時代に立派なヤンキーとしてアメリカで生きることを選んだことを忘れないその姿には崇高なものを見る思いがする。
 ヨーロッパでも一つにまとまっていこうとする力と、それぞれの国が文化や伝統を大切にし誇りとする力とは対立するものではなく、同時進行でうねりとなっているという。
 マクドナルドやミスタードーナツに代表されるファーストフードのグローバリズムやアレンジを繰り返して無国籍風になっていく料理とは別の系列で、それぞれのお国の料理に人々が魅せられ続けるように、二十一世紀はインターナショナリズムとナショナリズム、グローバリゼーションとローカリゼーションがオーケストラのように複雑に奏でられていくのだろう。
 他の国からいいものをいただいたり、いいとこどりする器量と要領を持ちつつも、自分に内在するものへの敬愛を忘れず、そこからエネルギーを汲みあげ続けることが、人にも国にも深い魅力を与えるものであることを、今世紀の人々は確認しつつ歩んでいくのだろうか。

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