メッセージ(バックナンバー)
 秋葉原の事件は悲しく、悔しく、やりきれません。
 もう一年ほど前のことですが、今も記憶に新しい外電があります。
 ポーランドで共産政権下の1988年に鉄道事故にあい、19年間も昏睡状態にあった男性が、医師も回復の見込みがないとするなか、献身的な妻の看病によって目が醒めたという報道です。
 まるでタイムスリップのように目が醒めた男性は、共産政権が終わっており、自分に11人の孫がいることを知って「人々が携帯電話を持ち歩き、愚痴を言い続けているのに驚いている。わたしには不満が何もない」と話しているというのです。
 私は、そばにいた娘に
「不満が何もないって、いい言葉。便利になったり、自由が増えたりしても、人間はそれを上手に使うどころか、不満や愚痴を言ったり、ワガママや怠けることにしか使えないことも多いのよね。この男性は、19年をタイムスリップしたから、感謝の心で生きることがより深く理解されたのね」
と感想を言いますと、娘は
「お父さんが亡くなってから、明日は何が起こるか誰もわからない。家族や友達とはたくさん楽しく話したほうがいいとわかった。だから多くの人が親や周りの人と仲良くなればいいと願うようになったけれど、現実には携帯電話で手のこんだイジメに悩まされている友人も多くて、時間とお金の無駄使いには悲しくなる」
と答えました。
ふと田舎の祖母の顔が浮かびました。
「幸せは、自分の心が決めるのや。幸せといわれるものに囲まれていても幸せと思わぬ人もいる。過酷な中にも感謝や恵みを見出す人もいる。それぞれの年令でふさわしいとされてきたことを率直に順番に歩いていくことや。耐えんとあかんことを大切に。喜び受けんとあかんよ。神さん仏さんがその中にいなさるで」。
 大家族の中で6人の子を生み3人の子を亡くし、朝は3時起きで雪国の新聞配達店と書店を仕切っていた祖母は、88才で亡くなる直前まで愚痴を言わずに人に尽くし、孫の私に知恵を語り続けてくれる人でした。
「みかんジュース買いにいこか」「おろしそば食べにいこか」。
 いたずら顔で時折私を誘って、街に出た日々は今もなつかしい思い出です。
 秋葉原で亡くなられた方々のご冥福を祈ります。
 地域社会の再生、家族の絆、自然とのつながり、あたたかな雇用環境、心の健康をとり戻す政策の充実に励んでいきたいと考えています。

平成20年6月11日 山谷えり子

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