メッセージ(バックナンバー)
 11月18日、初の「家族の日」。
 政府が毎年11月の第3日曜日を「家族の日」とするもので、その前後の各1週間が「家族の週間」。
 自治体は美術館や施設などファミリー割引をしたり、経済界はノー残業デーを要請したり、商業関係はファミリーパスポート割引を発行して、商店やレストランなどで使えるようにしたりと、今後毎年のとりくみが進んでいくことを期待します。
 この「家族の日」もともとは一昨年、安倍官房長官(当時)のリーダーシップで、私が事務局長をつとめた官邸に設けられた「家族の絆、地域社会の再生プロジェクトチーム」の中で議論されたものの一つでした。
 対処療法的なものではなく、人々の幸せのためには社会全体で子供や生命を大切にするあたたかな家族政策が重要であるという考えのもとに、妊娠、出産からの子育て支援、マタニティマークの普及、働き方の見直し、家族用住宅、三世代同居、近居の支援、税制の検討、有害情報対策など、推進の提言をしたものが今、一歩づつ実現していっています。
 マスコミも国民のニーズと心情に対する理解を深めて、もっと報道していただけたら嬉しいのですが…。
 内閣府は脳科学者のメッセージ「脳機能の発達、乳幼児のすこやかな育ちのためには家族などが顔や目を見つめて話して。テレビ等を一人で見る機会を減らして。見る場合は家族一緒に見る。
 食事を一緒にする機会を増やすことが重要」などや小児科医の「乳児期にはあたたかい抱きしめを」などのメッセージを載せた小冊子を用意しました。
 
 さて、私の11月18日(日)は、といえば朝は七五三のご家族でいっぱいの近所の神社でファミリー写真の撮影係。(というのも、日曜は近所の神社、ウィークデーは官邸の近くの日枝神社に朝お参りするのが日課なので、この日曜はたまたま七五三のピークに自然にぶつかった次第)
 おじいちゃん、おばあちゃんも一緒の家族の喜びをパチリ、パチリと撮らせてもらえて、こちらもとても幸せな気分になれました。美しい紅葉、多摩川の水辺に秋の陽がゆらめき、富士山が遠くに見えて、深呼吸しながら感謝でした。
 夕方からは義妹たちが発起人と事務局をつとめたマドレーヌ・マルロー夫人のピアノコンサートの会場整理係をつとめました。息子は照明係、娘たちは録音係、おいもめいも、姑もファミリー全員そろって働きました。
 マドレーヌ・マルローさんはソロピアニストとして、パリのオペラ座やカーネギーホール、ベルリン音楽祭、モスクワなど世界各地でリサイタルをしているフランス女性。
 夫はアンドレ・マルロー(1958年〜1969年文化大臣)氏で、彼女は93才を過ぎた今も、フランス各地でエッセイ朗読などに合わせてドビュッシーやプロコフィエフ等のピアノ曲を弾いておられる静かで、たおやかな女性です。はにかみながら、ごあいさつする雰囲気に日本女性にも共通する文化の空気を感じました。
 マドレーヌさんはもともとアンドレ・マルロー氏の弟ローランド氏と結婚されて一児の母となられたのですが、ローランド氏が戦時中レジスタンス運動で戦死。
 兄のアンドレと再婚。アンドレの二人の息子を養育し、中断していたピアニストとしてのキャリアを50才頃から再開されるのです。指先から生まれる音は、光や粒や弾性の連なりをつむいでいくドビュッシーの魅力いっぱい。
 そうした世界をこよなく愛してやまないその姿勢に人生の中で、彼女の耐えてきた試練を、時に重ねながら聞かせていただきました。
 会場には、フランソワーズモレシャンさんや兼高かおるさん、竹村健一さんらの姿も見られました。マルロー夫人のご厚意でコンサート収益は日本赤十字社とスペシャルオリンピックス日本を通じて、子供たちの為に役立たせていただくことができました。
 とっぷり暮れた外は木枯らし一番。でもファミリーで働いて皆さまにピアノの音を聞いていただくことが出来、夫の妹たちもホットな心だったことでしょう。亡き夫も、私たちと共に会場を走り回ってくれている感じがいたしました。
 そう、「家族の日」というのは、生きている者だけでなく、幽明を異にした家族も、みんなみんないつも一緒と感じ直す日なのかもしれません。

平成19年11月19日 山谷えり子

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