メッセージ(バックナンバー)
 教育再生懇談会で、教科書の質、量の充実について、議論しました。
 日本はじめ欧米、アジア諸国などの小、中、高校の教科書を並べ、比較研究しているところですが、今回は英語に続いて算数、数学、理科の教科書の内容、分量の比較を研究者から説明をうけつつ行いました。
 論点としては、

教科書の質・量の充実について(論点メモ)
以下のように、教科書の質・量の充実を図ることについて、どう考えるか。
1 自学自習にも適した丁寧な記述、文章量の充実
現在の日本の教科書は、教室で授業を受けながら使うことを前提に作られているが、もっと自学自習にも適したものにすることはどうか。
考える力、探究する力、知識を活用する力などを付けるための基になる題材を提供できる教科書にすることが必要ではないか。
  • 一人で読んで理解できるよう、より丁寧な記述にする。
  • 練習問題(例:算数・数学)や、文章の量(例:国語における古典や先哲、文豪の名文、英語における英文の量)、原典からの引用(例:倫理における哲学者の原典、英語における新聞、演説等の原典)などを増やす。
2 発展学習、補充学習に関する記述の充実
発展学習や補充学習の内容をもっと記述することはどうか。現在、5%程度しか記述されていないが、一層の充実を目指して、分量の上限(小・中学校1割、高校2割)は撤廃してはどうか。
その際には、教科書は、書かれていること全部を教えるものではない、という考え方(教科書観)が常識になるよう、保護者や教員の意識改革が必要ではないか。
  • 例:高等学校の教科書に、大学レベルの内容や、中学校の復習内容を記述する。
  • その事項を学ぶことがどのような最先端の科学につながるかなど、各分野の専門家が、小・中・高校生に伝えたい最新の内容や各分野の魅力を自由に記述できるようにする。
3 実生活や実社会との関連など興味、意欲を高める記述の充実
現在の日本の教科書は、身に付けるべき基礎知識に絞り込んだ記述になっているが、もっと子供たちを惹き付ける工夫をすることはどうか。
  • 各事項をなぜ学ぶのか、実生活や実社会でどのように役に立つのかなどについて記述し、興味や意欲を湧き起こす、無味乾燥でない教科書にする。
  • 他の教科に関連する内容も柔軟に記述できるようにする(例:理科の教科書に、保健、技術・家庭、社会科などの内容を記述することも可とする)。
4 豊かな情操や道徳心の育成などに資する題材の充実
新しい教育基本法において、幅広い教養、豊かな情操と道徳心、生命を尊び自然を大切にする態度、伝統と文化を尊重する態度などの教育の目標が規定された。
また、新しい学習指導要領、解説書に、地域社会に対する誇りと愛情を育てるとともに、我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育てること、よりよい社会の形成に参画する資質や能力の基礎を培うこと、家庭生活を大切にする心情を育むこと、自己と家庭、家庭と社会とのつながりを重視することなどが規定された。
これらが教科書に反映されることが必要ではないか。
  • 例えば、国語、音楽、美術などの教科書において、日本の伝統、文化、自然や四季に関する題材や、夢や希望を持って生きること、道徳的心情を豊かにすることなどに資する題材(文章、歌、絵画など)を充実する。
  • 例えば、社会科、家庭科などの教科書において、地域社会や我が国に対する理解や愛情を深める内容、よりよい社会の形成への参画に関する内容、家庭や家族の大切さに関する内容などを充実する。
以上のような中身の充実した教科書に見合うページ数が必要ではないか(例えば、国語、理科、英語は2倍増)。
諸外国の教科書の内容の比較分析や、教科書の表現や記述に関する研究(例えば、英訳教科書との比較)など、教科書の改善に役立てる研究体制を充実してはどうか。

などです。
 
 また、携帯電話の小中学生の利用について、学校、町ぐるみ、教育委員会など積極的に行っているところの取り組み例を研究しつつ議論しました。
 石川県野々市町では「“ののいちっ子を育てる”町民会議」が町や学校に「便利でもいずれキバむく子どもケイタイ」「携帯電話 今の僕らには不必要」などの看板を立て、町ぐるみで、所持率ゼロを目指しています。
 群馬県太田市は教育長アピールとしてPTA連合会の協力をえて「携帯電話を持たせないようにしましょう」と緊急アピールをこの夏行っています。
 佐賀市教育委員会としても「小中学生には原則、携帯電話を持たせないことが望ましいと考えます」という教育委員会見解をPTA連合会と協議して作っています。
 18才未満の性的犯罪に係る検挙数は平成18年度で全国1915件。月に約120件も、少女たちが性的犯罪にあっています。うち97%が携帯電話を利用して出会い系サイトにアクセスしてのものといわれています。
 硫化水素自殺、自殺未遂も10、20代で今年上半期で月に80件ほどありました。安心安全のため所持させるといっても、実はこんなに恐ろしいということを保護者には理解してほしいと思います。
 携帯電話の有害情報から子供を守ることについては、フィルタリングが大雑把なものでしかないことに伴い年令別フィルタリングをもっと細かく開発、普及すべきことや販売マニュアルの整備、サイバーパトロールのあり方、トラブル対処マニュアル作りなど、さらに詰めていく必要があります。作業チームを作って継続していくことになりました。
 続いて、「子どもと若者総合支援勉強会」からの報告。幼児教育からニート、不登校、引きこもり、就労支援などタテ割り行政でなく総合的に取り組む必要性を教育再生会議で提言し、今回勉強会で中間とりまとめを行いました。今後、概算要求に反映されていくよう働きかけていきます。
 大分県の教員採用等における不正行為については、
  • 不正を許さない教員採用システムにすることが必要。県によって透明性の高さに違いがあるが、できるだけ透明性の高い方に引き上げていくべき。
  • 同じような風土はどこにもある。厳しく対応すべき。教育委員会制度のプラス面、マイナス面から具体的な議論が必要。
  • 教育委員を任命している首長の責任もある。
  • 人事権を移譲すると、メリットの反面、情実も入りやすくなり、丁寧な議論必要。
  • 教員の倫理観、職業へのプライドが重要。教員採用試験の倍率のアンバランスも原因。
などの意見が出ました。
 近日中に教育再生委員懇談会として緊急アピールを出すことになりました。
 また教育委員会のあり方についても具体的改革につながる議論をとりまとめていくことを確認しました。
 コネがなければ採用されないと先生志望の夢を失う若者たちもいます。大分県だけでなく、どこにでも起こりうる、起こっている問題として、取り組んでいかねばならないと考えています。

平成20年7月28日 山谷えり子

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