メッセージ(バックナンバー)

 両陛下が乳幼児施設東京都新宿区「二葉保育園」で子供たちと触れ合われたという報道に、懐かしさがこみあげてきました。私も学生時代、時々二葉乳児院を訪ね、読み聞かせをしたりしていたからです。
 明治33年に設立された園は保護者が病気などで養育困難な子供たちが育つ場所で、訪問すると、突進するかのように抱きついてくる子、遠慮がちに遠くから、私が本を読む声を聞く子、服をひっ張る子、ひざにのぼってくる子など、愛着のあらわし方がさまざまでした。どの子も幼児特有の忘れられない匂いを発していました。
 「乳児は肌を離さずに、幼児は手を離さずに、少年は目を離さずに、青年は心を離さずに」の言葉を、体で悟った思いがしたものです。
 連休中に、「日本の神話」伝承の会の出雲井晶さんが「昭和天皇」(出雲井晶著・扶桑社1000円)をお送り下さいました。ヘブライ大学で最も人気の講座が“昭和史”だったというほど、日本の昭和史は、資源のない日本が苦難に満ちた歩みを歩み、国家と民族の存亡の危機から立ち直り、平安な暮らしを再び手にする世界にも珍しい奇跡の歩みです。
 この歩みを昭和天皇のご仁慈と、終戦のご聖断からご巡幸、時には常磐炭坑の地下坑内温度62度の中を歩み、
「あつさつよき 磐城の里の 炭山に はたらく人を ををしとぞ見し」
とお詠みになられるという炭坑の皆さまと汗と涙のやりとりがあったり、古川の県立高等学校では、お風呂もない学校でたらいの水でお体をふかれ、教室にござをしいて布団をしいてお休みになられたりのご様子などが、呼吸が聞こえるほどの筆づかいで描かれています。
 昭和天皇は終戦の年、御母貞明皇后を思い、
「夕ぐれの さびしき庭に 草をうゑて うれしとぞおもふ 母のめぐみを」
とお詠みになられています。
 出雲井晶先生独特のあたたかな優しさ、清明な美しさにみちた文章で、昭和天皇のお姿、国民の苦しみから立ち直るあふれんばかりの意欲の歩みのあとをたどりながら、緑まばゆいこの季節の平和な風景に感謝せずにはいられませんでした。
 そしてそのような歩みとお姿を今も両陛下により、昨日は二葉保育園でそして今日も明日も明後日も続いていくことのもったいなさに感謝致しました。

平成18年5月9日 山谷えり子

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