平成13年度活動報告

命と教育 胎児の命への眼差し…
文部科学大臣ご感想をお願いします
平成13年12月1日 生命尊重ニュース 12月号
 
 今年も子どもをめぐる痛ましい事件が相次いだ。親と子、児童と教師など、子どもを取り巻くさまざまな問題が改めて注目されている中、山谷えり子衆議院議員が10月31日衆議院文部科学委員会で質問に立った。
 まず山谷議員は、宗教と教育について、富山県の学校で給食時に当番が「合掌」と呼びかけ、全員が「いただきます」と唱和していたが、平成八年以降「宗教的色彩」があるという理由で取りやめられたケースなどを取り上げ、「学校は臆病になりすぎ」と指摘し、感謝する心、感動する心、人間の力を超えたものの畏敬の念なくして心の教育は不毛と延べ、神戸市の中国自動車道で中学一年の少女が放置され死亡した事件にふれ、教師の倫理性、社会規範、モラルの低下は目おおうばかりと、先生たちの養成に「命の大切さ」を取り入れてもらいたいと訴えた。
 つづいて十代の性と胎児について質問。以下そのやりとりを掲載する。
命をつなぐ重さ
山谷議員:
 青年期の性――人間にとっての性行動は、単に生殖につながるだけのものではなく、男女のコミュニケーションとして愛情を育てて確かめ合い、互いに充足感を求めようとする行動である。私達人間は、長い歴史の過程で、愛と性の文化を作り上げてきた。」
 これが雑誌に書いてあれば、高校生に教えるのでなければ、こういう書き方はあり得るとは思うのですが「人間にとっての性行動は、男女のコミュニケーションとして愛情を育て」などと書かれると、「性行動がないと愛が育たないのかしら」と思ってしまうかもしれないのです。教科書検定基準には「誤解される恐れのある表現のないこと」「健全な情操の育成について必用な配慮があること」とありますが、これはどうでしょうか。
池坊大臣政務官:
 子供たちに正しい性教育をすることは大変必用なことだと思います。「男女のコミュニケーションが性なのかと思うではないか」ということですが、これは全体の中のこういう文章で、愛というのは文化である、性交はただ生殖だけでなく、人間だけがもてる自制の精神も必要としているものだと書いていますので、個々の先生方の指導のあり方にもかかってくると思いますが、全部を通して読めば、子供たちもしっかりと性、愛における性交とはどういうものかということを、理解していくと思っております。
山谷議員:
 雑誌ならともかく、教科書ではいかがなものかと言いたかった訳です。
 次に命への眼差しについて、この五十年間、わが国では中絶手術が七千万件、実は倍はあるとも言われておりますが、先の大戦で亡くなられた方が三百万人です。十代の中絶数が平成十二年で四四、四七七件。十五から十九歳の中絶実施率は、この五年間で二倍になっております。その胎児の命について、「やむを得ず産めない場合には、母体保護法において人工妊娠中絶という方法を選択することもあるだろう。こうした選択肢は女性の基本的人権の一つとして捉えることができる」と書いてあります。これがシェア三十七・七%の高校の家庭科です。「中絶が必要になった場合には、できるだけ早期、十一週に行う方が母体への負担は少ない」というような書き方もあります。そうでない表現も教科書にあるわけですが、一つの命、神秘に対する周囲の人々の大きな愛の眼差しというものがあまり感じられない、一方的な書き方になっているのではないかと感じたわけです。
 次三人の子を私は授かりましたけれども、遠い昔から伝わってきた命を、次の世代に伝える意味とか畏れとか感謝とかを非常に深く味わいました。けれども教科書によっては、「子供は天からの授かりものと考えられていたが」と過去形みたいに書いてある教科書もありました。本当にそうでしょうか(笑)。現在の教科書の記述には、命に対する畏敬の念、命の流れの神秘、それから相手のパートナーだけでなくて、産まれてくる子を取り巻く暖かい人々の思い、そして胎児への愛と責任、倫理的な視点が欠けている。今の教科書は、心身の負担が女性にとって多いというような書き方に変ってきております。現代社会の風潮の中では、命をつないでいく重さよりも、自己決定権が強調されているように読みとってしまう子もいるのではないかと感じておりますが、大臣、いかがでしょうか。
岸田副大臣:
 教科書は、いろいろな読み方ができると思います。人工妊娠中絶の記述ですが、教科書の「母性の健康と生命の誕生について」の中で、「経済的、精神的、健康的な理由などから妊娠しないことも親の責任であり、子供の生命や親の人生設計上重要である」、「望まない妊娠について、パートナーと十分に話し合う必用がある」ということ、そして、やむを得ない場合として、ご指摘のこの記述があるわけです。それに加えて一九九四年に、カイロで開かれた世界人口開発会議において、「主体的に選択できる自己決定権を持つことが女性の基本的な人権である」として、「人工妊娠中絶も選択肢の一つであるという考え方が盛り込まれている」と述べられており、さらに、コラムにおいて、「宗教上の問題から世界的な一致に見るに至っていない」という記述もある。この全体を判断した上で、専門家から成る教科書用図書検定調査審議会の審議を経て、検定で許容されたということです。しかし、命の尊さということについては、これが大切なことは、だれも異存がないと思っております。この大切な部分において、しっかりと認識されるよう、誤解がないように、努力をしていかなければと考えております。
子育てって損?
山谷委員:
 カイロ会議の文章を英語で読みましたが、私の読解力では基本的人権の一つ、選択肢の一つであるということが確認されたというように読み取れなかったことをお伝えしたい。ちなみに、家庭についてはこのように書かれております。
 「日本は、欧米先進国と比較しても、離婚率があまり高くはない。では、日本の夫婦関係は良好かと言えば、そうとも言えない。離婚後の経済事情を考えれば、結婚生活を続けざるを得ないケースなどもあるからである。」と書いてあります。最後に遠山大臣、青少年の性、退治のこと、それから家族のあり方、いろいろ教科書を読ませていただきましたが、ご感想をお願いできればと思います。
遠山大臣:
 一番大事なのは、人間にとって、自分自身だけではなくて、他者の、胎児を含むかもしれませんが、命の大切さというものをきちんと学んでいくことが基本にあるのではないかと思います。それぞれの教師が自分の信念でしっかりと、伝えてもらいたいと思います。

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