メッセージ(バックナンバー)
 ジャスミンの香り、バラの香り。五月の薫風の中を花々の香りが幼い日々に連れ戻してくれるように、甘い幸せの記憶と共に体を包んでくれます。
 5月8日は富山縣護國神社(富山の山王日枝神社に参拝したあと)でお話をしてきました。
 昨日は、高校の日本史の先生の米寿をお祝いする会に、上は70代から50代までの世代が集まりました。
 26年間も都立駒場高校でお教えになられたのです。歴史が大好きだった私はよく勉強もしましたが、よくやんちゃもして叱られもしました。
 その時先生は46才でいらしたことも知り“私は生徒冥利に尽きます”と言ったら“ナニ言ってんだァ”と言われてしまいました。
 1時から4時まで何と先生はソクラテス、プラトンから始まりマックスウェーバーに宮沢賢治、日本の美しさにと話を進められ、私たちは圧倒されて聞いておりました。
 「今日は米寿を祝う集まりというが、先生にとっては生前葬だと思っている。だから葬式には来なくていい。今日の授業を思い出して、酒をのんでしのんでくれ。駒場時代に教えた生徒たちがこんなに集まってくれて、僕の人生は幸せで良いものだったと思う。あな嬉し、喜ばし、あな嬉し、喜ばし、あな嬉し、喜ばし…いいね。だから皆僕より先に死ぬな。時々順番間違えて、先生より先に死ぬ生徒がこの頃おる。それは悲しくてイヤだ。だから長生きして…いいね」
 こんな風におっしゃられる先生を前に、私は感謝の涙。
 会の終わり、映画監督になり日本アカデミー賞もとったクラスメートの根岸吉太郎君が言いました。
 「僕が映画を完成させたり賞をとると、あな嬉し、喜ばし…と葉書をくれるんだ。いやーそれにしてもあんなに元気でいらっしゃるとは想像もしてなかった…ああいう風に年とりてぇなあ」。
 今、根岸君は、この秋上映予定の松たか子主演、太宰治の「ヴィヨンの妻」を制作中。また、あな嬉し、喜ばしの葉書が届くでしょうか。
 88才にして、先生の情熱は、ほとばしり、白髪としわのある私たちは、先生の講義にメモを走らせたのでした。
 先生いわく、

ソクラテス
 最も尊重せらるべきは生きることそのものではなくて善く生きる事である。
 善く生きることと美しく生きることと正しく生きることは同じだ。
 ソクラテス(BC469〜399)の言葉
 プラトン(BC427〜347)『クリトン』岩波文庫 昭和13年2月6日読了

マックスウェーバー
 或る写本の或る箇処について「これが永遠の問題である」として何事も忘れて其の解釈をうることに熱中するといつた気持?これのない人は学問には向かない。さういふ人は何かほかのことをやつた方がいい。なぜならば苟も人間としての自覚ある者にとつて、情熱なしに為しうるすべては無価値だからである。
 マックス・ウェーバー(1864〜1920)『職業としての学問』岩波文庫

宮沢賢治
 正しく強く生きるとは 銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。 われらは世界のまことの幸福をた索ねよう。 求道すでに道である。 われらに要るものは銀河を包む透明な意志 巨きな力と熱である。
 われらの前途は輝きながら研峻である。研峻のその度ごとに四次芸術は巨大と深さとを加える。 詩人は苦痛をも享楽する。
 永久の未完成 これ完成である。
 宮沢賢治(1896〜1933)「農民芸術概論綱要」

平成21年5月11日 山谷えり子

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