ゴールデンウィークは、いかがでしたか。 |
私は久々に休みを少しいただき、少女時代の夏には毎日潜っていた伊豆の赤沢海岸に母と子供とまいりました。 |
以前は、ゴールデンウィーク中の海は泳ぐ人は珍しかったのに、近年は、ウエットスーツの若者、子供たち、そして、ゴールデンレトリバーが何匹も海で泳ぎ、にぎわっています。いわしをいただき丸干し加工をいたしました。 |
近所に、ドッグフォレスト、犬の森というところが出来たというので、我が家のチワワを連れて、出向いてみました。 |
大型犬、中型、小型犬が自由に走り回るスペースがあります。我が家の犬はすぐにケンカを始めてしまったので退場です。 |
それにしても入場料大人一人1200円、犬一匹500円、犬の風呂は400円と決して安くないのに、人と犬でにぎわっています。 |
レンタル犬も30〜40匹ほどいて、犬を借りて森を散歩している人ともすれ違います。 |
“まあ珍しい犬。何と言うのですか”と尋ねても、“さあ、何だったっけ???”と借り主が首をかしげられるのもごあいきょう。母は“まあまあ、お犬さまの時代なのねぇ”と驚いていました。 |
その後、一人で小高い山に登り、途中の小さな公園のブランコを久々にこいでみました。 |
空が近くなったり、遠のいたり。風が体を包んでブランコのひもがキシキシ鳴って、幼い頃の身体感覚と五感がよみがえります。 |
1、2、3…と数えながら、1才2才…その時の自分のメモリー映像を思い浮かべてみました。 |
1、2、3…弟が生まれ、母が金だらいで弟のオムツを洗っています。 |
4、5…幼稚園で私はタータンチェックのリボンを髪に結んで砂遊び。 |
6、7…公園のベンチ、背には森永キャラメルの文字。“♪誰もいないと思っていても〜”と有名な森永キャラメルのコマーシャルソングが聞こえてきます。 |
昔は子供の心を明るくするコマーシャルソングがいっぱいありました。その頃の私の好きなおやつは、トマトの丸かじり。 |
8、9…藤棚の下を友人と自転車こいで競争です。 |
10、11…ゴム段飛びに石けり。ソロバン教室、お習字教室の帰り路、よく遊びました。 |
12、13…水泳部で泳ぎに泳ぎました。 |
14、15…東京に引っ越して住んだ所はキャベツ畑まん中。ちょうちょを見ながら通学。 |
16、17…セーラー服で満員バスに揺られて、時々痴漢のオジサンもいましたっけ。 |
そして、大学生、会社員、アメリカでのフリーライター時代。東京に戻ってサンケイリビング新聞社で記者生活。 |
29…結婚、31、33、35…出産。しばらく専業主婦をして編集長。 |
そしてこのブランコで長い休みのたびに子供たちの背中を押したのでした。目の前の大きな木の下で夫はよくやんちゃ盛りの子供を叱っていましたっけ。 |
40代は…仕事の帰りにスーパーへ、PTA会長もやって忙しい、忙しい。体ごとしゃべり、体ごと笑っていました。 |
53…突然未亡人になり、56…夫はこの年令で天に召されたのだなぁ、と。 |
そして57、今の年令。ブランコこぎは今年はこれでストップ。オシマイ。 |
50才すぎてのブランコこぎは、こんな味わい方もあったんだと、友人たちに50才すぎての醍醐味を伝授しようとブランコを降り、思っていると、目の前の大きな木が風に揺れて大きな音を出しました。 |
まるで夫が話しているよう。 |
“邪念なく楽しんで良かったね。56才で天に召された僕のことあわれむこたあないよ。この世で君のやってることこうして見ては、からかったり、一緒に楽しんだりしてるんだからさ。”と言っているような気がして、ハッとしました。 |
帰宅して、三島由紀夫の戯曲を読みました。素晴らしいセリフ、セリフ。 |
「政治とは他人の憎悪を理解する能力なんだよ。この世を動かしてゐる百千百万の憎悪の歯車を利用して、それで世間を動かすことなんだよ。愛情なんぞに比べれば、憎悪のはうがずつと力強く人間を動かしてゐるんだからね。」(鹿鳴館より) |
「どうしてそんなに自分の感情を大切にするんだ。ユヤ。それは一種の病気だよ。さうして自分の悲しみと楽しみとの不調和をいろいろと気にするが、世間の人たちの好きなのは不調和なのだ。相容れないものが一つになり、反対のものがお互ひを照らす。それがつまり美といふものだ。陽気な女の花見より、悲しんでゐる女の花見のはうが美しい。さうぢやないか、」( - 近代能楽集ノ内 - 熊野より) |
「高飛車な物言ひをするとき、女はいちばん誇りを失くしてゐるんです。女が女王さまに憧れるのは、失くすことのできる誇りを、女王さまはいちばん沢山持つてゐるからだわ」( - 近代能楽集ノ内 - 葵上より) |
こうしてしばしのギアチェンジの時間を与えられ、また永田町で気の抜けない日々に戻ります。 |
三島由紀夫がこの世を去ったのは昭和45年11月25日。9才と5才の子供たちを残されてのことでした。 |
憎しみでなく愛が、邪でなく純が、エゴでなく天の心が感じられる場が与えられますように。 |
さて、さて、今夕、本日は、ビル・ゲイツとの懇談です。 |
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平成20年5月7日 山谷えり子 |