メッセージ(バックナンバー)

 編集長を長くつとめたせいか、私は今でもベストセラーが気になります。正月に少し時間があったので、ベストセラー3冊「国家の品格」(藤原正彦)「下流社会」(三浦展)「生協の白石さん」(白石昌則ほか)を読みました。数学者の藤原正彦さんが日本的「情緒」を土台に品格ある国会を目指すべしと説いています。
 平等はフィクション、平等より惻隠の情を、跪く心を忘れるな、古典を読め、情緒と形を大切に、真のエリートが必要、エリートとは、哲学や歴史、文学など教養をたっぷり身につけ、いざとなれば、国家、国民のために喜んで命を捨てる気概があること。精神性を尊ぶ風土、美の大切さを説き、論理の力を疑うようになったという藤原さんの本に“何かヘンだぞ最近の日本人”と思っている読者の支持があるのはうなづけます。藤原さんは、先日国会にきてくださいました。
 論理を正しくつみあげても最初の土台が間違っていれば、つみあげればつみあげるほど間違った方向に行く。頭のいい論理的人間ほど最初が間違えば始末におえない結論を導いてしまうと言われて苦笑いなさいました。かつて東大法学部を出て官僚になられる方々は、古典や文学を読みあさり、死ぬことを見すえて処世術には冷淡であったり、冷淡なふりができたりしていました。
 昨今は、サテどうでしょう。素晴らしい方々もおられますが、教育システムにも問題があり、惻隠の情や跪く心、情緒と型というと、むしろフーテンの寅さんやタコ社長のほうをすぐれてイメージする人も多いのではないでしょうか。
 「下流社会」は、いくら働いてもラクにならない下層とは違って、働かないラクさを選んでしまっている人の分析本。たとえばカップラーメンを食べ、ダラダラとテレビを見つづけ、人づきあいも恋愛も面倒だからせず、向上心も意欲もなく、中の下にラクだから居つづける人のことで、そのうち日本は「上」が15%「中」が45%「下」が40%の時代がくると予見しています。下流とは社会的弱者でなく、日本の新たな脅威の階層になるだろうという指摘にフリーター、ニート、結婚しないパラサイト(寄生虫のように親元で生きる若者)が周囲に増える日本で、50万部を超すベストセラーになったことがヒヤリとします。
 「生協の白石さん」は二人の娘が面白がって読んでいたものです。生協の白石さんに、いろんな人が注文し、それに誠実に答えるという本で、注文のワガママさ、トンチンカンさに、ていねいに時に少々ウイットで答えていくやりとりがウケているらしいのですが、正直私にはピンときませんでした。「いやー、こんな他人のタラタラしたやりとりにつきあっているヒマがあれば、古典を読みなさい。電車男みたいなタラタラぶりね」と私が言っても、二人の娘は笑っています。時代によりコロンと感性が違ってしまっているのか、それともこれが、今風の惻隠の情ともいうのでしょうか。
 少子化問題も構造改革も、議論の土台に社会の中に上質の“ものの感じ方”、社会を支える人々がいなければ成り立ちません。日本の平和と豊かさとは、何だろうと考え込む3冊でした。

平成18年1月19日 山谷えり子

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