メッセージ(バックナンバー)

 アメリカ大統領の一般教書演説は、それぞれの時代・社会の中で、考えさせる材料提供スピーチであると、毎回思います。
 ブッシュ大統領2期目では会場に、父親をフセイン政権に殺され、けれどもテロの脅しに屈することなく今回の選挙で投票したというイラク女性と、イラクで戦死した米海兵隊員の母親がそのイラク女性と抱きあう姿がありました。9・11テロの時も、テロリストに屈せず、飛行機内で戦って亡くなった男性の妻が議会に招かれていました。政治的パフォーマンスといわれればそうですが、常に政治と国と個人、一人一人の人生と真実を求めて生きる生き方をそれぞれの立場で考えるということがベースにあっての演出だと思います。また、神と人との関係についても、ブッシュ大統領だけでなく、歴代の大統領はリンカーンも、ケネディも…必ず述べていることには日本の多くの人が気づいていないことかもしれません。
 今回の演説は、経済、社会保障、安全保障問題とアメリカ国内の悩みがよくわかるものでしたが、日本ではあまり注目されていない部分として、私は価値観について述べたくだりに興味を引かれました。
一般教書演説の要旨
【米国の価値観】
一、 結婚は神聖なものであり、社会の根幹をなす。リベラルな判事が再定義すべきでない。結婚の枠組みを守ろうとする憲法修正案を支持する。
一、 生命倫理を確立する必要がある。科学は常に人間性を維持するためにあるもので、この基準について明確な合意が必要だ。ヒト胚(はい)を実験のために作ることがないように議会と協力していく。若者を犯罪から遠ざける三年計画を提案する…
 というのも、現在日本で子どもたちが使っている教科書では結婚や家族の根幹を意図的にこわそうとしているかのような記述にみちており、(詳しくは、私が3月号VOICEで「家庭科教科書も危ない」を書いています。)また、私自身、4年前ヒト胚に関する法案が日本の国会で提出された時、その抜け穴の多い法案に疑問をもち、新しい法案を議員立法として提出し、答弁席に立ち、修正案として可決成立させた経緯があるからです。政治の方向は価値観の裏打ちがあって決定されていきます。多様な価値観と普遍的な価値観とを、現在起こっている現象の中でどう考え、かじ取りをしていくかを議論し決定するのが政治。多くの国々で真剣に表の場で議論されるこの種の家族のあり方、生命倫理に関して日本ではあまり活発に議論されないことに不安をおぼえます。
 なお、シリアがテロの台頭を許しているのではという指摘が演説の中でありましたが、私は2年前、川口外務大臣と国会の場で、日本のシリアODAのあり方についてやりとりをしました。
平成15年6月27日 第156回国会
イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会
…(略)…
「北朝鮮による拉致を含む人権侵害に対する非難決議」について
- 山谷委員
 このときに人権状況決議に反対した国、アルジェリア、キューバ、シリア、ジンバブエ、スーダン、中国、ベトナム、マレーシア、リビア、ロシア、十カ国でございますけれども、こうした国々にODAなどを日本は出しているわけでございます。
 日本のODAを出す条件といたしましては、平和主義であること、それから人権を大切に考えていることということが非常に大きな柱になっているというふう に思うんですけれども、テロリストあるいはテロ支援国家、武器などを渡しているそのような国家も含まれているわけですね。もう少ししっかりしたODAの見 直しというものもしていただきたいと思いますけれども、その辺、いかがでございましょうか。
- 川口国務大臣
 ODAにつきましては、我が国の外交の目的を達成するために、一つの重要な手段としてこれを行っているわけでございますけ れども、それをやるに際しては、経済協力の大綱に基づいて考えてやっております。今、その大綱については、これは十年たってしまいましたので、その見直し の作業をやっておりまして、この夏を目途にそれができ上がるということでございます。
 それで、先ほどおっしゃいました拉致との関係では、これは人権委員会で採択をされた決議について、賛成多数で採択をされましたけれども、十カ国がこれに 対して反対をいたしました。これらの国に対しては、我が国として、日本が拉致の問題の解決を求めているこの決議を重視している、そして反対票を投じたこと は極めて遺憾でありますということを言いました。それから、これから国際的な場において日本として拉致の問題を取り上げていく考えでいるので、そのときに は日本の主張に積極的に対応してほしいということを希望しますということで申し入れを行っております。それに対しまして、それらの国々からは、拉致問題に ついての日本の立場というのは十分に理解をしているけれども、人権問題が国別の決議という形で取り上げられるということに反対をしたんだという趣旨の御説明がありました。
…(略)…

平成17年2月3日 山谷えり子

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